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慶應義塾大学薬学部 代謝生理化学講座のホームページです。

TEL. 03-5400-2677

〒105-8512 東京都港区芝公園1-5-30 3号館7階

研究内容CONCEPT

研究概要

質代謝と病態・バイオロジーに関する研究

 脂質はエネルギー源、生体膜成分、シグナル伝達分子としての機能をもち、生命活動において必須です。私たちはこれまでに、生体内の脂肪酸やリン脂質の代謝を網羅的かつ定量的に把握するためのメタボローム解析システムを構築し、炎症・代謝性疾患の制御において脂肪酸代謝バランスが重要であることを示してきました。中でも、EPAやDHAなどω3脂肪酸が体内で活性代謝物に変換され、積極的に抗炎症作用を発揮していることを見出してきました。これら内因性の炎症制御性物質をメタボローム解析により包括的に捉え、その生成機構や作用機構を分子レベルで明らかにすることは、炎症を基盤病態とする様々な疾患の病態解明および新しい治療法の開発につながることが期待されます。さらに、新しい生理活性物質(機能性脂質)の探索や新しい創薬標的の同定を志向した、リピドミクス新技術の開発と応用を進めています。





 生物における脂質の三大機能と構造多様性





 脂質代謝バランスと病態・バイオロジーとの関連

ω3脂肪酸の代謝と抗炎症作用

 エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのω3脂肪酸には、抗炎症作用や心血管保護作用があることが知られています。ω3脂 肪酸は、ω6系であるアラキドン酸から生成する起炎性メディエーター(プロスタグランジンやロイコトリエン)の生成と作用に対して拮抗することで炎症を抑 制すると考えられてきましたが、新たにEPAやDHAから生成する抗炎症性代謝物が見いだされ、その生理機能が注目されています。このような背景のもと、 私たちはアラキドン酸、EPA、DHA由来の代謝物を包括的に捉える目的で、LC-MS/MSを用いたターゲット解析システムを確立しました。また、哺乳 類では本来持たない機能であるω3脂肪酸合成能を持たせるため、線虫由来のω3脂肪酸合成酵素(Fat-1)を遺伝子導入したトランスジェニックマウス (Fat-1 Tgマウス)を用いています。このFat-1 Tgマウスは、炎症性疾患やがんに対して強い抵抗性を示し、これまで栄養学的な解析しかなされてこなかったω3脂肪酸の生理機能に対して遺伝学的な根拠を 与え、かつ細胞・分子レベルでの解析が可能になりました。これらの研究を通して、これまでに栄養学的に広く認知されていたω3脂肪酸の疾病予防効果について、特定の細胞や臓器から生成する内因性の抗炎症性代謝物が関与する可能性が次第に明らかになってきました。

 

ω3脂肪酸EPAの代謝経路と代謝物のさまざまな機能 RIKEN NEWS No.408 June 2015より抜粋

 

炎症の収束に関わる細胞と脂肪酸代謝系の包括的解析

 炎症反応は外傷や感染に対する重要な生体防御系です。一方、炎症の遷延化および慢性化の分子機構の一つとして、炎症の収束機構の障害の可能性が示唆されています。すなわち生体の恒常性維持において、一旦誘発された炎症は適切に収束する必要があり、この制御が破綻すると慢性炎症へと発展してしまうことがあります。私たちは、炎症の収束に関わる細胞やメディエーターを網羅的に特定し、生体が本来兼ね備えている能動的な炎症収束能力について分子レベルで明らかにすることを目指しています。その結果、能動的な炎症収束に関わる好酸球やマクロファージの機能が、12/15-リポキシゲナーゼによる脂肪酸代謝系によって制御されている可能性が明らかになってきました。本研究で見いだされた内在性の炎症収束因子を、「治らない炎症」を基盤病態とする慢性疾患に適用し、病態解明およびこれまでにない新しい治療戦略としての応用を目指しています。

 

  炎症の収束に関わる好酸球の新規機能

皮膚の恒常性維持に関わる脂質代謝系の網羅的メタボローム解析

 皮膚は、我々の体の外表面を覆うことで外部環境と内部環境を区画する組織であり、異物やアレルゲンに対する物理的障壁や免疫応答、体内の水分保持といったバリア機能を備えています。皮膚のバリア機能が破綻すると、アトピー性皮膚炎や角化症といった種々の皮膚疾患をはじめ、皮膚感作を介したアレルギー性喘息など様々な疾患を引き起こすことがわかっています。皮膚のバリア機能を形成・維持するためには、様々な脂質代謝系が不可欠であり、バリア本体として機能するセラミドはもちろん、イノシトールリン脂質代謝やトリグリセリド代謝、リポキシゲナーゼ経路や必須脂肪酸の摂取なども皮膚恒常性の維持に重要であることが示されています。私たちは質量分析技術を利用して、皮膚疾患の発症や皮膚の形成過程といった皮膚恒常性が変化する環境において、様々な脂質のバランスがどのように変化するかを経時的かつ網羅的に捉えることで、皮膚疾患発症の陰に隠された病態メカニズムの究明や、皮膚恒常性の維持に関わる新たな脂質代謝系の発見とその生理的意義の解明を目指しています。


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